“Mission with Spirit” 聖書を土台に、福音を宣べ伝え人に尽くす。

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専門学校三育学院カレッジ ホーム > 新着情報一覧 > [全学共通] 2017年4月3日 18:30

新着情報 記事詳細

全学共通

2017年度入学式式辞

18:30 UP

「それゆえ、信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。」 
コリントの信徒への手紙一 13章13節(新共同訳聖書)



 2017年度入学式にあたり新入生、再入学生の皆様、そして保護者、ご家族の皆様に心からお祝いを申し上げます。

 皆様は、新しい場所で、始めて出会う仲間達とこれから数年間の学修を始めようとしています。見知らぬところは、不安です。気心の知れた仲間から離れて、知らない人たちとの生活が始まります。一方、そこには新しい出会いがあります。皆様の周りには、同じ目的に向かって学ぶ仲間がいます。看護そして神学と学ぶ分野は異なりますが、多くの新しい仲間との出会いが皆様を待っています。高等教育での学びは、より専門的になり、将来の働きと直結します。専門的な学びと共に、三育学院での学生生活全般を通して、喜びや悲しみを共有し、人生をより深く知るような経験をして頂きたいと願っています。

 この式辞を準備しながら、しばらく前になつかしく読み返しました森 有正の「遙かなるノートルダム」という本に描かれていた一つのエピソードを思い出しました。森有正は、クリスチャン思想家、バッハの演奏者で、初代文部大臣で日本の高等教育の基礎を築いたと言われる森有礼(もり・ありのり)の孫にあたります。森有正のエッセイは、中等教育の教科書にも掲載されていましたので、保護者の皆様の中には、彼のエッセイをお読みになられた方もいらっしゃると思います。私は、神学科の学生であった頃、彼の著作に惹かれて何冊か読んだことがありました。
 戦争中、森 有正は、家族が疎開している信州に月に一、二度、「言語道断なほど混んでいる汽車にのって」出かけていました。そこである小学校の先生から音楽の天才だという二人の少年を紹介されました。二人とも目が不自由でした。この少年達は、ラジオで聞く流行歌でも、オーケストラでも、一度で覚えてしまい、それをすぐピアノの上に再現できるというのです。そしてそこにあったピアノで和音を付け、森 有正の前でどんどん奏いて見せました。バッハの演奏家でもあった彼は、平均律ピアノの一曲を奏いて聞かせました。ここからは、森 有正の文を直接引用します。「私はその時の少年達の表情を忘れることができません。いつまでたっても、夢見るようにだまっているのです。そしてもう一度聞きたいと申しました。戦争中の乱雑で昂奮した軍歌や流行歌やオーケストラ、模倣して奏けば、面白かったですんでしまうもの、それとちがう一つの世界を示すもの、少年達の盲目の表情は、その秩序ある世界に見入っているようでした。私は少年達のその表情、ほとんど敬虔と言いたい表情を忘れることができません。」(森 有正、「遙かなるノートルダム」193,194)この少年達について、森 有正は、このように記しています。「あとできくと、この少年達は耳がよいというので、敵機の来襲を探知する防空監視人に採用された、ということです。」(同上、194)
この盲目の少年達は、学んだと言うより深い出会いを経験したのだと森 有正は、考えていたようです。
 暗記し、技術をくり返し習得するような学修もあります。それらも大切であります。そうしたものの上に築かれるものがあるからです。そのような学修と共に、音楽の天才と呼ばれた少年達がバッハに出会ったときのような深い経験を三育学院でしていただきたいと願っています。なぜなら看護の仕事も牧師あるいは伝道者、そして教育の働きも、人の心に触れる機会の多い仕事だからです。それぞれの仕事において、なにげない日常的な会話もあるでしょう。また、専門職としての知識が求められ、対応することも当然有るでしょう。しかし、それに留まらず、人々の心の深みに触れ、ときには、喜びを、ときには悲しみや苦しみ、心の叫びさえ共有するような経験に遭遇する場合があるからです。
 入学式にあたり三育学院がその教育の基礎としている聖書の中から一つの言葉をご紹介したいと思います。先程朗読していただきました言葉です。入学式の次第に印刷されています。

「それゆえ、信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。」 
コリントの信徒への手紙一 13章13節(新共同訳聖書)

 社会が猛烈なスピードで変化し、将来が見通しにくい時代ですが、聖書にはいつまでも残るものがあると書かれています。信じること、希望を抱くこと、愛することが難しい社会になりつつあります。人々が文化や、様々な違いを超えて互いに理解し、手を繋ぐよりも、その反対に壁を作り、排除する流れが世界各地に起きています。それは、弱まるどころか、ますます強い流れになっています。

 看護師の仕事においても、教育者、そして伝道者、牧師の働きにおいても、専門的な知識や技術と共に、信じ、希望を抱き、愛することが求められます。何をするか、英語で表現すれば、Doingと共に、あなたがどのような存在であるのか、すなわちBeingが重要です。看護でも患者さんは、体のいやしと共に心の回復を求め必要としているからです。学校でも子供たちは、信仰と希望と愛を求めています。社会においても、教会においても同様であります。

 三育学院では目指す教育を標語として掲げています。それはTo Make People Wholeという言葉です。「全人的教育を目指して」という意味です。

 三育学院に来て、どちらを見ても山、何もない、辺鄙というような印象を抱く学生さんたちが少なからずいます。ところが卒業前には、本人にとっても予想外のことのようですが、多くの学生がここを離れたくないという思いを持つようになります。おそらくこれは、地理的な、環境的なものというよりも、三育学院は、学修の場を超えて様々な、そして深い出会いの場であるからだと思っております。三育学院生は、人生においてかけがえのない学び、出会いをされているのだと思います。

 私たち教職員は、みなさまを全力でサポートいたします。
この三育学院で良き学びをされ、経験を積み重ね、経験を深めてください。
皆様に神の祝福を心からお祈りし、式辞といたします。
                       2017年 4月3日 
                           学長 東出克己


新入生一人ひとりに校章ピンが手渡されました